ワット・マハーブット境内奥にある、ナーク廟の横に辿りつきました。


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廟の外側にも祀られているんですね。

ここの表記は「プラカノンのナーク母さん廟」になってます。
周囲にはタイ衣装、人形、綺麗な飾り付けなどのお供えがどっさりと。


ところで「ナーク」って誰?とお思いの方もいると思うので
簡単に説明をしてみます。

昔、プラカノンの運河沿いに夫マークと妻ナークの夫婦が住んでいました。
マークは政府に徴兵されて身重のナークを残し戦地へ赴きます。

戦場で負傷しバンコクの寺で療養を終えたマークが帰ってくると、
ナークは赤子を抱えて家の前の船着場で待っていました。

しかし、そのナーク母子は幽霊だったのです。
出産時に母子ともに命を落としていました。

ナークが幽霊である事実をマークに伝えようとした村人は
次々にナークに呪い殺されてしまいます。

が、ナークが床下に落ちたライムを、ろくろっ首の首よろしく
手をにゅる~と伸ばして取ったのを偶然目撃したマークは、
ようやくナークが幽霊であることに気付き、
このワット・マハーブットに逃げ込みます。

結局、僧侶または祈祷師によってナークは成仏されて、
あるいは壺に閉じ込められて一件落着というお話です。

ナークは、タイ人がおそらくもっとも怖がっている幽霊ですね。


では、正面に回ってみましょう。


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お供え物の豊富さと対照的に、
建物自体は意外と質素。


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中央には、また祭壇が。
ここで手を合わせている人も多いです。

ナークの話は、「ナーン・ナーク」(Mrs.ナーク)や
「メー・ナーク」(ナーク母さん)のタイトルで1936年以来
実に30作品近く映画化されてきました。

色んな顔があるのは、その時々の主演女優の顔ということかな。

かつては単なるホラーやコメディ映画だったのが、
1999年の『ナーン・ナーク』では夫婦愛とタイの伝統を精緻に描き
大ヒットを記録しました。
私も当時映画館で観てボロ泣きした記憶が ^_^;)

実はタイ映画は衰退の一途だったのですが、
この映画のヒットでV字回復を見せたんですよ。


さて、いよいよ中へ。 と思ったら、


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「中に入っての写真・ビデオ撮影禁止」

とのこと。ありゃー、残念。

ここの表記は「ナーク婆さん廟」。
こっちが正式名称のようです。

「参拝時間07:30~17:30。
 宝くじ当選番号発表日前日は終夜開放。」

なんじゃそりゃ!
願掛け客の大半は、宝くじ当選祈願なのか?
てっきり恋愛成就祈願なのかと -_-;)

「ナーク婆さんへの願掛け、または願掛け成就のお供えは、
 事前に係員に申し出てください。」

成就のお供えは、置く場所を空けたりという手間があるから分かるけど、
願掛け時にも申し出なければならない理由がナゾですね。


ということで、中では写真撮影禁止ですが、
反対解釈で外からならOKでしょう。


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外から内部をカメラで狙うと、左手にはこんなブースが。

参拝客は、願掛け(「ボン」といいます)の際に、
もし願いがかなったらお礼にこれこれの品をお供えします
(「ゲーボン」といいます)と祈願するんです。

で、ここは成就した際のお供え品の販売所のようで。

タイ衣装各種、子供服、布地、タイ式家屋のミニチュア、
化粧品(えっ?)、アクセサリー等々…。

でももっとも高いタイ衣装でも200バーツというのは、
良心的なお値段ですよね。


そして中央には、


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人だかりが。

この後入ってわかったんですが、あの一角は、
まるで人の家の部屋みたいな造りになっているんです。

その壁際の檀上に、金色の顔に黒髪のナーク像が祀られていました。
50cmぐらいの高さでしょうか。

周囲にはゲーボンの品が所狭しと置かれていて、
その前で多くの女性が手を合わせていました。


でもナークの伝説って、当初のストーリーは
今とずいぶん違っていたようなんです。

ナークについて書かれたもっとも古い1899年の文献によるとこうでした。

ラマ3世期(1824-51年)、バンコクのプラカノン運河河口に
郡長の娘ナークと王族劇団の団員チュムの夫婦が住んでいたものの、
ナークは難産の末死亡し、遺体がワット・マハーブットに埋葬されます。

息子達は、父チュムが再婚して父からの遺産取り分が減ることを心配。
そこで息子の一人が母の姿に扮装して一帯の村人たちを脅かし再婚を阻止。
しかしこの息子はのちにワット・ポーの便所で首吊り自殺をしたというものでした。

20世紀に入ると話がどんどん脚色され、1930年代の新聞連載小説では、
ほぼ現在のストーリーになっているのだそうです。

実話を元にした怪談ということでは、
お岩さんみたいな感じなのかもしれませんね。


さすがに入口からでは、ナークご本尊像を狙えませんでしたが、
左手お供え物販売所の看板に写真があったので掲載しておきます。


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黒髪にとても違和感があるのですが、1999年版『ナーン・ナーク』では、
ナークが髪に櫛を通す度に髪が抜けていくのを悲しむシーンが
あるんですよ。それでなんでしょうね。


最近では2013年の映画『ピーマーク..プラカノン
(邦題『愛しのゴースト』)があります。
一見コメディ仕立てなのですが、これまた夫婦愛を描き、
かつ後味の良いエンディングであることもあり、空前の大ヒット。

今でもタイ映画史上興行収入No.1の座をぶっちぎりで守っています。
やはり、ナークのご利益は絶大ということなんでしょうかね。


ご利益といえば、こんなこともありました。

その『ピーマーク..プラカノン』でマークを演じた俳優マリオ
今年2015年4月、軍から徴兵くじ引きへの招集がかかったのです。

地区で招集を受けた180人中、徴兵されるのは21人。
順にくじを引き、マリオの2人前の段階で赤札(当たり)は残り4本。

そしてマリオの番
引いたのは「黒札」、つまり徴兵を免れたのでした。

くじ引きで招集された場所は、オンヌット・ソイ67。
オンヌット通りとプラカノン運河の間というのも奇妙な偶然。

この報道を受けて、宝くじ当選祈願にくる人が
倍増しているんじゃないでしょうか? ^^


…という、人も恐れるご利益絶大なナーク廟なのでありました。




<旅費交通費>
歩いただけなので:0バーツ
ここまでの合計:7バーツ

※旅は2014年10月19日(日)に行いました。

<参考>
「タイの映画(第19回)ノンシー・ニミブット監督とその作品(2)
 -怪奇映画の新しい伝統-」宇戸清治, 『タイ国情報』2013年1月号,
 日本タイ協会,2013年
Wikipedia "รายชื่อภาพยนตร์ไทยที่ทำเงินสูงสุดในประเทศไทย"

元記事(楽天ブログ タイとタイ語に魅せられて)


つづく

ワットマハーブット

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